宗祖覚恵上人のもとに来る同行には、貧しい者、不治の病を持つ者、悩んで進退に窮した者などが大勢いました。宗祖は、その縋(すが)る気持ちを察して、腹の減った者には食事を、お金のない者には帰りの旅費をこっそり施されていました。
また、金銭を渡されるときにも、相手の自尊心を傷つけないように、
「あなたが元気になって、働けるようになって、返せるときに返せばよかですよ」
と、細かいところにまでも、気を配っておられました。
中には、初めから、大本山での食事をあてにして来る者もいましたが、宗祖は、
「ここに来るからには、よっぽどのことがあるとばい」
と、食事の上に旅費まで与えられていました。
「徳を積め、仏徳を積め」「種をまけ、まかぬ種ははえぬ」
と、常々、口にしておられた宗祖覚恵上人は、同行に徳を積むことを説き、自らもよく手本を示されていたのです。さて、私たちはどうでしょうか。「徳積み」が自然と、いつでも、どこでも、誰にでも表せる信仰者となりたいものです。
『宗祖上人伝』「人生鏡鑑」より
(一部抜粋し再編集しました)